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宮崎家庭裁判所都城支部 昭和47年(少)491号 決定

少年 S・O(昭二八・二・一四生)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、

第一、かねて知友の自動車運転手○口○美(当二四年)と共謀の上

一、昭和四七年九月一日午後六時二五分頃、国鉄○○駅前において、たまたま同日知り合つた女子高校生○原○子、○下○ゆ○(いずれも当一五年)の両名を姦婬しようと企て、同女らに対し、自宅まで送つてやるなどと嘘を言つて、その旨誤信している同女らを、右○口の運転する普通乗用自動車に乗せたまま発進し、もつて姦淫の目的で同女らを誘拐し

二、前同時刻頃から同日午後一〇時三〇分頃までの間、同駅前附近から鹿児島市○○町○○○○××××番地○井○子方を経て国分市○○××××番地の×××モーテル「○」こと○宮○ヨ方まで約一五〇キロメートルの間、同女らを右自動車に乗車させたまま時速約六〇キロメートルの速度で疾走させるなどして脱出できないようにし、もつて同女らを不法に車内に監禁し

三、同日午後一一時三〇分頃、前記モーテル「○」第六号室において、少年が○下○ゆ○を、同第五号室において、○口○美が○原○子を、それぞれ寝台の上に押し倒し、抵抗する同女らを抑えつけて着衣をはぎ取るなどの暴行を加え、その反抗を抑圧して強いて同女らを姦淫したが、その際、同女らにそれぞれ全治約七日間を要する処女膜裂傷の傷害を負わせ

第二、公安委員会の運転免許を受けないで

一、前同日午後六時三五分頃から同日午後一〇時三〇分頃までの間、都城市○○町××××番地の×○崎○寿○方前路上から前記○井○男方を経て前記モーテル「○」こと○宮○ヨ方までの間、普通乗用自動車を運転し

二、翌二日午前八時頃から同日午前一〇時頃までの間、都城市○○町××街区×号○原○設こと○原○久方前路上から同市○○町××××番地○○○○○を経て右○原○久方前路上までの間、普通乗用自動車を運転し

たものである。

(適条)

第一の一の事実につき刑法第二二五条、第六〇条

第一の二の事実につき刑法第二二〇条第一項、第六〇条

第一の三の事実につき刑法第一八一条、第一七七条前段、第六〇条

第二の事実につき道路交通法第一一八条第一項第一号、第六四条

(処遇)

少年は、昭和四三年七月二三日、窃盗保護事件により保護観察に付されたが、間もなく再非行(窃盗)により一年六ヵ月間の試験観察(昭和四四年一一月二五日決定)を経て、昭和四六年五月一一日、再度の保護観察に付されたものであるが、いずれも受容態度が極めて悪かつたため、その効果があがらないまま本非行に及んだものである。

ところで、本件の罪質、情状に照らすと、少年に対しては、刑事処分が相当であると言えないこともないのであるが、本件については、保護者において、被害者に対する一応の慰藉をなした結果、被害者の宥恕が得られたほか、少年においても、当初の投やりな、自己本位、他罰的、悲観的な態度があらたまり、内省的な態度が見られ、自己理解、洞察力も高まつてきているので、これらの事情に照らして、この際、少年を特別少年院に収容して矯正教育を施すのが相当であると認め、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 石田実秀)

参考 (移送地裁決定宮崎地裁都城支部昭四七(わ)五四・六四号 昭四七・一二・八決定)

主文

本件を宮崎家庭裁判所都城支部に移送する。

理由

被告人に対する本件公訴事実は別紙のとおりであつて、右事実は本件各証拠によつてほぼこれを認めうるが、被告人の境遇、経歴、本件事案の性質等諸般の事実に照らして考えるに、この際、被告人に対して刑事処分を以つて臨むよりは、むしろ保護処分に付するのが相当であると認められるので、少年法第五五条により本件を宮崎家庭裁判所都城支部に移送することとする。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石田実秀 裁判官 福富昌昭 浜崎浩一)

別紙〈省略〉

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